AIでクリエイターはどうなる?プロのイラストレーターの予想と考察
- 2023.03.04
- お知らせ

長らくブログ更新をサボってしまい申し訳ありません。よー清水です。
最近、AIの話題を聞かない日はないほど、世間がAIで沸いています。特に私のような絵描きは画像生成AIとの付き合い方など考えることが増えてまいりました。
今回の記事はイラストレーターとしてゲーム、アニメ、映画、書籍などさまざまなコンテンツに携わった経験と視点で、AI技術の今後について予想をまとめた内容になります。
あくまで予想かつ、どちらかと言えば現状のAIには反対の立ち位置のため、バイアスはかかっていることをご了承いただけたら幸いです。
色々書いてたらめちゃくちゃ長くなってしまいました。お茶でも飲みながらゆっくり読んでみてください。
僕の立ち位置
・テクノロジーは大好きで、SFが好きです。
・テキスト生成AI、画像生成AI、どちらにも共通して「著作物を無断でAI学習に使っている」のは問題だと考えています。
・著作物をAI学習用に使って良いか権利者に許諾をとる仕組みは絶対に必要だと考えています。
・AIテクノロジー自体は素晴らしいものと考えており、著作物の問題がクリアされたAIはぜひ使いたいと考えています。
今後のAIについてのおおまかな予想
テキスト生成AI
ChatGPTなどのテキスト生成AIは世界をより便利に変える可能性があると思います。
検索の代替、Office系ソフトへの搭載、スマートスピーカーの高度化、企業や商品のヘルプ対応など、文字と音声を扱うあらゆるサービス、娯楽に搭載されることが予想されます。
テキスト生成AIの言葉通り、文章を生成してもらう、何かを教えてもらうより
「〇〇の内容を要約しなさい」でExcelファイルの数値データの内容を要約してもらったり
「AIの有用性について30Pのスライドを作成してください」とPowerPointに命じたり
自然な言葉で人間が指示することで、テキスト生成AIにスクリプトを書いてもらい、ソフトウェアやサービスを操作できること。これがいちばんの価値だと感じます。
しかし、画像生成AIと同様に小説や脚本、ニュースの記事、ソースコードなど他人の「著作物」を学習しているため、著者に訴訟される可能性が高いと考えます。
ChatGPTの学習にウォール・ストリート・ジャーナルやCNNなどの記事が許可なく使われていると報じられる
ついにGitHubのコードで学習したAI「GitHub Copilot」が集団訴訟に直面 – GIGAZINE
注目と期待を浴びる裏で、問題は山積みとなっています。
創作AI
絵、写真、動画等の「作品」っぽいものの生成に特化したAIをこの記事内では創作AIと呼びます。
まず生成AIの特徴はイラストなどを人間より高速に、大量生産ができることです。
この特徴を考えると、アニメーションや映像、ゲームなどの物量が必要な分野に導入される可能性はあると思っています。
現在にもポストエフェクトという技術があります。これはレンダリングが終わった後に画面全体に特殊効果をかける技術で、絵描き的に言うと調整レイヤーのようなものです。
このポストエフェクトのようにAIをフィルターのように使うことで、映像やゲーム体験をよりリッチにできる可能性があるとは思います。
しかし、テキストAI以上にかなり長期間にわたって揉めることが予想されます。
絵や写真、動画などのメディアはテキストに比べるとより多くの人に「作品」であると認識されているため、データとして勝手にAI学習に利用されることを「盗まれた」と感じやすく、反発が大きいからです。
すでに訴訟が起きていますが、今後も訴訟が多発することが予想されます。
画像生成AI「Stable Diffusion」と「Midjourney」に対して集団訴訟が提起される
未来のAIの法規制についての予想
一部の人たちは「著作物のAI利用は法で認められてる」と主張していますが、法というものは社会の変化に合わせて追加、修正されていくものです。
ちなみに新技術の代名詞と言えるドローンは2022年に機体登録制度などでガッツリ規制されました。僕は旅行先にドローンを持って行き、空撮するのが趣味だったので結構辛いです。
AI技術だけに今後規制がない、と言い切るほうが不自然だと考えます。
200グラム以上のドローン所有者は氏名や住所、機種などを国土交通省に申請。個別の登録記号(ID)は飛行時に機体に表示。登録せず飛行させた場合は50万円以下の罰金か1年以下の懲役。改正航空法が成立しました。https://t.co/l7FqaWZjbC
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) June 17, 2020
AIの生成物に、AI製である事を表示する義務
これは高確率で施行されると予想します。ChatGPTなどのテキストAIが他のテキストAIで生成された文章を学習用に取り込まないようにコストをかけてるのは有名な話で、データの量と質が求められるAI開発でも有用だからです。
オープンソースでアングラな生成AIは対応しない可能性も高いですが、そういうものは結局のところ表の経済圏では使うことができないため、違法なソフトだと認知されるだけになると予想しています。
中国が画像生成AIの画像に「AI生成マークの表示」を義務化&AIユーザーも実名登録制へ
自分の著作物をAI学習に利用するかの可否を決められる法
著作物というのは写真やイラストなどの作品だけに限りません。
スマホ自撮り写真、ご飯の写真等、人間がインターネットに公開するあらゆる画像、音声、動画、小説、脚本、ソースコードなどの著作物として保護されるもののAI学習利用の可否を決められるようになると思います。
海外のクリエイターポートフォリオサイトArtStationなどは当初は特に規制がありませんでしたが、クリエイターからの抗議や訴訟が起きたためにNoAIタグ(AI学習に利用NGを示すタグ)が相次いで導入されました。
今後はほぼ間違いなく個人情報の利用やCookie許諾のような感じで施行されると予想します。
翻訳
私たちは利用規約を更新し、コンテンツのスクレイピングや再販・再配布が許可されていないことを明確にし、NoAIコンテンツをGenerative AI Programsで使用することの禁止を明確化しました。
また、ArtStationのコンテンツをGenerative AI Programsのトレーニング目的で使用しないこと、または第三者に使用を許諾しないことを約束しました。
写真系AIの全面規制の可能性
特にリアルな人物や現実世界を合成できるAIはフェイク画像、映像、ポルノ等で社会を混乱させる可能性が高いため、多くの国で規制されることが予想されます。
AIを規制というと、法規制は実効性がないのでは?オープンソースなものは実質的に規制が不可能と一部で言われていますが、法規制で一般の経済圏から排除されるだけで十分だと考えます。具体的にはアプリストア、投稿サイト、SNS、素材配布サイトなど普通の人や企業が利用する経済圏やプラットフォームから締め出されるだけで効果は高いでしょう。
スクリーンショットなどで学習を禁止したデータを勝手に取られたとしても、それを社会の公式の場で使えないというのは致命的です。
また、今後はAIが検索の代行をすることが予想されるため、法規制されたAIの情報を検索AIが弾き、実質的にアクセスができない対応も可能になると思われます。(これは情報操作や検閲とかにも使われそうで闇が深いですね)
AIの法規制の流れ
AI関連の情報を追っているとわかりますが、AI開発の本場はアメリカを中心とする英語圏で、同時に創作AIに対して批判が大きいのも英語圏です。
印象的なのが「steal」”盗む”という単語が頻発されていて、創作AIは生み出してるのでなく、人から盗んでいると考える人が多いようです。
画像生成AIの生成物をAI Artと呼ばれることが多いですが「Art」”芸術”と呼ぶのはそもそも間違いだと言う人もいます。
それに比べると日本のクリエイターの反応はかなり優しいです。アートに対する権利意識の高さや、キリスト教の人を中心とする宗教観などが大きく影響しているのかもしれません。
これらのことから、僕はまずアメリカの州法やEUを中心に英語圏で法規制され、なし崩しに日本もそれにならう、という流れを予想しています。
過去記事紹介:GDPRの衝撃再来か? 欧州AI規制で最低限知っておきたい基礎知識 https://t.co/tjLA12joix
— MIT Tech Review JP (@techreviewjp) February 25, 2023
特にEUはEU一般データ保護規則 、GDPRという法で個人情報を取得するCookieを規制したことが記憶に新しいでしょう。
この法律でwebサイトに訪れるとCookie利用についてポップアップ警告が出るようになりました。
EUはルール作りが強いので数年以内に何かしらの動きがあると予想します。
創作AIが劣化する可能性
法規制の予想で書いた「自分の著作物をAI学習に利用するかの可否を決められる法」が実際に施行されると、ほとんどのアーティストが「自分の作品をAI学習に利用することを拒否する」ようになると予想します。
実際NoAIダグが導入されたArtstationでは人間の新規投稿作品のほとんどにNoAIタグがついてます。
ちなみに、現在は自主的にNoAIタグつけなきゃいけないのですが、NoAIタグを作品投稿時のデフォルトにしろと言ってる人もいました。
ArtStationでは抗議活動のため、一時期は新規作品のほとんどがNoAI画像で埋め尽くされました。
作品を作った経験がない人には分かりにくい概念かもしれませんが、凄い作品を作れる人は作品がアイデンティティと一体となってることが多いです。
多くの人に支持される作品というのは、年単位で情熱を注ぎ込んで修練し、莫大な時間をかけてやっと作れるようになります。これらの時間と労力、またこの問題では都合よく忘れられがちですが、そのアーティストが作品を作れるまでにアート系スクール等に収めた学費、画材代、機材代などの経済的なコストもあります。
これらを考えた上で、作品を無償で提供したいという人はかなり少ないでしょう。(いるのか?)
ちなみにロイヤリティなど経済的メリットがない場合は僕も絶対に嫌です。
現状の画像生成AIが凄い画像を作れるというのは、「凄いクリエイターの作品をたくさん集めてる」からであって、そもそも凄いデータがなければ成り立ちません。凄いデータを使うことを拒否されれば、創作AIは現在の性能より劣化する可能性があります。
AIが出力した作品を再度学習させて精度を高める技術も研究されてはいますが、テキスト生成AIが「AIで作られたテキストを学習させていない」ように、人間のデータなしに人間が魅力的と感じる作品を作るのは難しいと思われます。
それこそAGIと呼ばれる人を超えた本物の人工知能が必要になるでしょう。
個人特化の創作AI
凄いアーティストの作品を学習したことで、どんなものでも作れる今の創作AIは劣化することを予想していますが、創作AIが完全に無くなるということはないと思います。
今のボイスロイドのようにデータを提供することを許諾した特定のクリエイターそっくりの特化型AIはでてくるでしょう。広く使われれば使われるほど、データ提供元にロイヤリティを払う仕組みできれば夢がありますね。
VOICEVOXで絶賛大ブレイク中のずんだもんの声優さんは「伊藤ゆいな」さんです。
僕のイチオシはずんだもんなのだ!
著作権問題とNoAI旋風
https://twitter.com/franklingraves/status/1628468012515827718?s=20
アメリカ合衆国著作権局は画像生成AI「Midjourney」で生成された画像を使った漫画(セリフなどの人間が考えたもの以外に)著作権がないものと発表しました。
米国著作権局、AIが創作した絵画は著作権登録の対象とはならないと判断
この記事で、日本の法律事務所の方が翻訳し、解説してくださってるので是非読んでみてください。
あくまで米国の例ですが、AIの本場である米国の判断は世界にも大きく影響を与えます。
この発表ではAI生成物に多少の加筆修正を加えたくらいでは、人間の意思が認められない=著作権が発生しない、と判定されています。
これがかなり曲者で、AI生成物に対してどこまで加筆を加えれば著作権が発生するか、今後間違いなく論争になりそうです。
ただ、プロして絵を描く立場から言うと、どこまで修正したら著作権が発生するか、公式なガイドラインが出たとしても、それは絵の内容やモチーフによって大きく変わりますし、場合によるとしか言いようがない状況になるはずです。
では、この著作権の決定がなし崩しになるかというと、そう甘くならない可能性が高いです。
なぜかと言うと、画像生成AIが国内でも海外でも、ヘイトを買いすぎてるからです。
日本の場合は、pixivやDLsiteなど既存のプラットフォームが突然、大量のAI生成物に占領されている状態や他人が投稿した絵をAIを通して若干修正して自作発言をする嫌がらせなど、AIのあまりにもモラルのない使われ方を見て、元々AIを容認していたクリエイターもじわじわと確実に怒りを募らせています。
海外では国内で起きたプラットフォームの占領や嫌がらせはもちろんですが、自分の作品が「盗まれている」とAI技術自体を否定してる人が増えています。
(以下の動画の内容を解説すると、プロを中心とするアーティストたちがプラットフォームのAIに対する姿勢に怒って作品を全削除したり、NoAI画像を投稿しまくってるという状況です。)
keep it rolling #artstation #AI #art pic.twitter.com/hA5lppVFnF
— Patrick de Boer (@PatrickDeBoer3D) December 14, 2022
海外ではAI画像生成技術が脚光を浴びて一年も経っていないのに、戦争と言ってもいいくらいの状況になってるんです。
特に米国は訴訟大国なので、著作権の判定を徹底的に追求した、画像生成AI技術を滅ぼすための訴訟合戦が展開される可能性すらあります。
クリスタが導入しようとしたAIがキャンセルされる
印象的な例が、株式会社セルシスのCLIP STUDIO PAINTが試験的に導入しようとした「画像生成AIパレット」が導入前に批判が相次ぎ、取りやめの上に謝罪文を掲載することになった事件です。
CLIP STUDIO PAINTに「画像生成AIパレット」の試験的実装を予定
これはStable Diffusionを利用したもので、背景などにAIがその場で生成した画像を使えるという便利機能でした。
導入がキャンセルされたのは、発表直後から主に海外でボコボコに叩かれたことが原因です。
今、日本は世界と密接に繋がっています。日本のアニメも漫画もゲームも世界に展開されています。
もし仮にアメリカでは画像生成AIの生成物に著作権を与えなかったが、日本では画像生成AIの生成物に著作権を与えると判断した場合でも、世界に展開されることが前提の商業コンテンツでは画像生成AIを使いにくいと言わざるを得ません。
このクリスタの例のように批判が集中してキャンセルされる可能性があるからです。
全ての問題がクリアされた場合、AIはイラストにどう使われるか
指示書の参考画像がAI製に
イラストで仕事をすると、クライアントから仕様書、指示書などが提供されます。
2023年現在では実在のキャラ、実在のゲームなどの画像がそのまま使われているのですが、あくまで内部資料だから黙認されているだけで、社外に漏れるのはもちろんまずいです。
これが著作権的に問題ないAI生成画像に代替されるのではないかと思います。
こんな感じの絵を描いてくれ!と相手に伝えるための資料として使われるということです。
デザインアイディアの参考資料
キャラクターデザイン、背景デザインなどを考える時には、参考となる資料をたくさん集めます。世界各地の服の造形や、靴の構造や、レンガの積み方、窓の形など本当に色々な資料を見ます。
これだけでかなりの時間が取られます。
実際に描いてデザインするより、資料を集める時間の方が長いと言う方もいます。
このようにデザインを考える参考資料としてAI生成画像を使うという手法はAI生成物を直接使っているわけではないため、心理的なハードルも低く、クリエイティブソフトに搭載されればかなり広まるのではないかと予想します。
ラフのパターン生成
これは私の画集の表紙イラストのラフで、2パターンを作っています。(もちろん手描きです)
仕事では複数のパターンのラフを作ることがよくあります。やってみるとわかりますが、かなり大変です。
きっついです。
この大変さを少しAIに肩代わりしてもらうことは可能だと思います。
例えば自分で描いたラフをAIに読み込ませそれと似たランダムなパターンを作ってもらったり、
もっと進めば「キャラクターの服の色を大きく変えたもの、空を夕焼けにしたもの、2パターンを作って」とテキストAIに言葉で指示することで任意のラフパターンを作ってもらうことも可能になるのではないかと思います。
あくまでラフなのは、そのまま使うと著作権問題に引っかかるかもしれないからです。
テクスチャのリアルタイム生成
真っ先に普及しそうなのがテクスチャのAI生成です。
例えば、女の子の服を描こうとしたとき、チェック柄などの柄がほしくなったら、現在は自分で素材を作るまたは素材サイトで素材を購入するなどします。
AIが搭載されれば、その場でAI生成されたテクスチャを使うことが可能です。
アニメ「鬼滅の刃」に登場した主人公のデザインに使われた市松模様が、商標登録を拒絶される出来事がありました。「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」という理由です。
このように、ありふれた模様をテクスチャとしてAI生成するのであれば、問題は少ないでしょう。
また、局部的なテクスチャ利用であれば、AIの著作権問題もクリアできると思います。
絵描きの夢はテキスト生成AIにあるのでは…?
画像生成AIが登場するまで、私たち絵描きはAIがめんどくさい作業を肩代わりしてくれるんだろうな〜くらいの気持ちでした。
画像生成AIではなく、「テキスト生成AI」こそがそれを可能にしてくれるかもしれないのです。
AIに指示したら直接AEを操作してくれるスクリプトができた pic.twitter.com/On3E6n9com
— Nisai (@muriminium) March 3, 2023
これはAftereffectの例です。
文書を打ち込むだけでこれだけのことができるなら、クリスタやPhotoshopを扱いながら
「間違ってレイヤーを統合しちゃったから、統合前まで戻してほしい」
「レイヤーの名前がごちゃごちゃなので、適当に名前付けしてほしい」
「キャンバスサイズを上下に10mm追加して」
「可愛いスニーカーの参考画像を集めて、キャンバスの周りに配置して」
「レベル補正、カラーバランス補正の調整レイヤーを使って昼を夜にして」
文字で入力するのはもちろん、キャラクターとパートナーのように会話しながら複雑なソフトの機能を使うことが可能になるはずです。
【朗報】GateboxとChatGPT連携してみたらやばいことになった…!
無限に会話できるし、返答も早いし、
キャラクターの個性もある程度維持できる…
ついにAIキャラクターにとっての革命が始まった! pic.twitter.com/wIVn6Sv2rK— 武地 実 @Gatebox 3.11クラファン (@takechi0209) March 3, 2023
これこそ、僕たち絵描きが想像していたアシスタントAIそのものの姿ではないでしょうか?
このように予想していくと、画像生成AIより、テキスト生成AIのほうが「アーティストの支援、作品制作の効率化」という意味では大きな革新につながると思えてなりません。
未来のクリエイティブソフトは、「AIモード」ではボタンやアイコンがほとんど表示されなくなり、言葉を使ってソフトの機能を実行するようになるんじゃないでしょうか。
言葉を使うのが逆に面倒というくらいソフトに習熟した人は「プロモード」でこれまでと同様にさまざまなアイコンをショートカット操作するようになるかもしれません。
R-18コンテンツと創作AIの親和性
創作AI、具体的に言えばStable Diffusionが今後日本で多用されるのは、R-18コンテンツだと予想します。
実際、pixivの新規AI画像を見ると、明らかにセクシー系、R-18イラストが多いです。
DLsiteやFANZAなどのプラットフォームでは、あまりにもAI生成の商品が多いため、制限がかかりました。
AI規制めっちゃ強化、DLsite「AI画像販売は月1まで」FANZA「販売希望日は無視」
イラストをはじめとする一般のオタクコンテンツは一種のコミュニケーションツールとなっています。
〇〇ちゃんが好き、〇〇が推し、〇〇はいいぞ、〇〇のアニメは〜と仲間と話して応援し、シェアする文化です。
この、他人と同じものを楽しみ、話題にし、シェアする文化とイラストを大量生産できるAIとの相性は、個人的にかなり微妙に感じています。
大量の似たようなイラストを、みんなで愛して、同じ文化を共有できるようになると皆さんは思いますか?
一般商業作品はコンテンツホルダーが多く、著作権、権利関連に厳しいです。
そんな中、一般のコンテンツと違い、R-18コンテンツは必ずしも他人とシェアする必要がない、むしろ隠されがちなものです。
自分で作って自分だけで楽しむ、ということができる唯一と言ってもいいジャンルです。
また、世間から隠されているが故にグレーなことが許されやすい領域でもあります。少し前に問題視された他人の顔を入れ替えられる、Deepfakeという技術で作られた動画の96%がポルノというデータがあります。
日本人アイドルも被害に。96%がポルノ動画の「ディープフェイク」政治的な悪用も
ただ、友人の識者いわく「AIエロCGは人間の絵にある性癖が感じられず秒で飽きた」という人もいますので、大量供給されるが故の飽きとの戦いが大変そうではあります。
AIを憎む人が増える未来
今後、生活のあらゆる所にAIが導入されるとAIを本気で憎む人々が出現することが予測されます。「AIに〇〇を奪われた」と被害者意識を感じる人たちが増えると思われます。
多分、「翻訳などで既にAIのお世話になってるのに、特定のAIを憎むのか」という批判合戦が起こると思いますが、人間というのは基本的にダブルスタンダードで守備一貫してる人の方が少ないので今更という感じです。
現代は感情の時代と僕は認識しています。
SNSの発達で昔なら表に出てこなかった個人の行動、感情や憎悪が大企業を動かし、法律すら変えてしまうような時代です。
クリエイターがAIについて危機感を表明するとラッダイト運動と揶揄されますが、ラッダイト運動が実際に起きた19世紀との1番の違いが個人の影響力の大きさです。
1人の中学生の悪ふざけで大企業が本気で動き、NHKニュースで報道される時代なのは、皆さんご存知のはずです。
スシローが警察に被害届提出 利用客の迷惑行為動画掲載で #nhk_news https://t.co/j7FR2AY9sx
— NHKニュース (@nhk_news) February 1, 2023
AIを本気で憎悪する人が増えると、生活や便利さに直結しない分野、特に娯楽などで創作AIが使われると炎上し、技術的には可能だけど企業が評判を気にしてAIが使えない、またはAIという単語を隠す未来があり得ると思います。
色々な企業とお取引してると痛感するのですが、まともなブランドを持つ企業というのはSNSやネットの感想をビックリするほど見ています。あなたの感想はビビるくらい見られています。
絵を描いてる人たちへ
今、絵を描いてる人は不安感に襲われてる人も少なくないようです。
AIがすごい画像を簡単に作るのを見てると、自分が絵を描いて何になるのか?
自分が頑張って描いた作品が勝手にAIに使われるのでないか?と色々と気にしちゃいますよね。
何かに追い詰めれれてるように感じてる人もいるでしょう。分からないことが多ければ多いほど不安も強くなるので、今わかってること、どんなことが起きてるかをいくつか書きました。少しでも助けになれば嬉しいです。
アーティストの権利を守るロビー活動
AIについて声を上げることに抵抗があるなら、お金で支援することもできます。
僕も寄付させていただきました。スマホでも簡単に寄付できるので気になる人はぜひ。
イラスト生成AIを今の段階で使ってみるべき?
技術の進歩が早い、毎日のように新しい技術が出てくるということは、同時に少し前に流行った手法がすぐ陳腐化するということでもあります。
今主流の呪文(プロンプト)で絵を生成するノウハウは今後、ChatGPTなどのテキストAIと組み合わせることで陳腐化し、別の手法が主流になっていくでしょう。
新しい技術だからといって、それを使うことが偉い、素晴らしいというわけでもありませんし、これまでの手で描くやり方が時代遅れになるものでもありません。
今でも鉛筆やペンや絵の具で絵を描いてる人はたくさんいますが、デジタルで絵を描いていたとしても、それを時代遅れと笑う人はほとんどいないでしょう。どれほど新しい技術が登場しても、人が絵を描くということは遥か昔の洞窟壁画から続く普遍的なものです。
少なくとも僕は、著作権問題がクリアされない限り、画像生成AIを補助的にも使うつもりはありません。
正確に言えば、僕の仕事はほぼ100%が商業のイラスト、コンセプトアートの制作なため、使えないです。
信頼していた外注さんからの納品物に著作権の扱いがよくわからないAI生成物が混ざっているというのは、クライアントからするとかなりの恐怖です。
また、将来的に絵の商業の仕事をしたいという人、特にゲーム業界などに就職したい人はAIを使うなとは言いませんが、絶対に手動で絵を描く練習をして、ポートフォリオにはAIイラストを入れないようにしてください。
というか、今後はポートフォリオをパッと見るだけでは手で描いたものかAIイラストか判別がつかないから、全てデッサンなどのアナログ作品の提出にして基礎画力だけを重視するかもね、みたいな話も聞きました。
絵のプロになりたい人は、基礎画力がこれまで以上に求められるようになると思ってください。
AI規制で海外に負けるという意見について
そもそも、何をもって勝ちとするのでしょう?
売上でしょうか?企業の時価総額でしょうか?ドル円レートですか?
このように、複雑な問題を極論の「勝ち負け」で語ってしまう人は、自分のフラストレーションを国や政策のせいにして都合よく叩いている人がほとんどです。
0、1の極論でものを語る人はどこにでも登場しますので、流されないようにしてくださいね。
コンテンツやもの作りというは最新の技術を導入しても困難な作業の連続です。外から見ると華やかですが、実際は泥臭く手作業の連続で地道なものです。ツール一つで勝ち負けが変わるほど甘い世界ではありません。
絵師もAIと同じように他人の絵を真似てるじゃん、なんで文句言うの?
こういう質問、ネットだとよくされますよね。
人間とAIの真似は大きく違います。
AIの学習と人間の真似の違いは「概念を読み取れるかどうか」です。
人間はその絵が何を示していて、どんな意味があるかを読み取ることができます。表面を真似るだけでなく「概念」を読み取ることができるんです。
例えばキャラの目に描く白いハイライトを人は「目の表面の光の反射」という意味があると知ってるので、そこから「目の中に周囲の映り込みを描く」表現が生まれました。
人間はただ真似るだけでなく、その意味が理解できるから、新しい表現や技術、絵柄を生み出せるんです。
AIは絵が何かも、自分が何をしているかもわかっていません。「真似ている」ということすらわかっていません。
ただ与えられた計算をしているだけです。何も理解してないし、何も考えてないんです。
お金のために煽る人
今、AIが時代の最先端として盛んに叫ばれてるのはお金や注目を集めるための「バズワード」でもあるということを忘れないでください。
「5G」「NFT」「仮想通貨」「iot」「仮想通貨」一時期盛大にもてはやされたあと、あんまり聞かなくなってしまったバズワードはたくさんあります。
こう言ったワードをいわゆる情報商材として詐欺的に活用するために、技術を誇張して煽ってる人も結構います。
そういう人は「規制されることをすでに予期してる」ので、
規制される前になんでもいいから稼げるだけ稼いでおこうと考えてる人もかなりいると思われます。
素晴らしい技術を使ってネットにゴミ情報を増やさないでほしいです。 pic.twitter.com/4csaOGafiS
— 雨宮純 (@caffelover) February 28, 2023
悪意で煽る人
絵描きはSNS上でフォロワーが多い傾向にあるため、やっかみを受けやすいです。
そのため、AIを使った嫌がらせを受けたり「AIがあるから絵師はもういらないw」などAIを盾に煽ってくる人たちがいます。
卑怯で大変情けないのが、自分の力でもなく、開発に貢献したでもないAIの力をバックに煽ってくる所ですね。
虎の威を借る狐ってやつです。相手にしないでくださいね。
https://twitter.com/you629/status/1060681621215555584?s=20
怒りに囚われないでください
AIを脅威に思うあまり意見が過激になりすぎてる人、不安で怒りっぽくなってる人をちらほら見るようになりました。
怒りや不安に支配されると判断力が鈍るので、手を組んではいけない人たちに近づいてしまったり、先鋭化しすぎて味方になってくれる世間のまともな人たちを遠ざけてしまいます。
怒りは暗黒面に繋がっています。ブチギレそうになったら、深呼吸して、美味しいものを食べて、風呂に入って、ゆっくり寝てください。
大いなる力には大いなる責任が伴う
絵や創作は、本気でやると他者の評価が得られるような力が身につくまでに 弛まぬ努力と時間がかかります。
力が身につくまでに時間と努力が必要だからこそ、 自分の力を碌でもないことに使わないプライドや自制心が育つと思うんですよ。
AI関連でモラルがない人が目につくのは、急にAIという借り物の力が備わって、 力に振り回されちゃってるんじゃないかと思います。
スパイダーマンの名言「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ですね
絵の技術は絶対に無駄にならない
これはプロとして断言しますが、AIがどれだけ発展しても絵を描く技術は無駄になりません。
将来的にイラストレーターがAIで出力した画像をベースに描くスタイルになると予想している人もいますが、そうなったとしても加筆や修正、あらゆる判断に絵の技術が必要になります。
例えば、3Dソフトを使ってあらゆるものを作るプロの3Dデザイナーは、3Dだけでなく練習でほぼ必ず絵を描く訓練をします。
絵を仕事にするレベルではないにしても、絵心がある人がほとんどです。絵心がないと平面を立体にイメージしたり、逆に立体を平面にイメージしたりできないので、魅力的な3Dモデルを作ることができないのです。
絵心というのは物体を面で捉えたり、構図の良し悪しを判断したり、絵の中の流れ、動き、シルエット、バランスを見るなどの総合的な判断力のことです。絵を手で描いた経験がないと絵心は絶対に身につけられません。
絵描きがAIを必須ツールとして使う時代になっても、AIに指示を出し、自分の思い通りのビジュアルを作り、「それが本当に良いものか判断する」ためには絵心が必須となります。
どれほどAI技術が進んでも、最終判断するのは人間です。
あなたが身につけた技術は絶対に無駄になりません。焦らず、怒らず、地道に積み重ねて、あなたにしか描けない作品を作っていきましょう。
お仕事の宣伝
2023年3月3日公開の『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』ポスターなどのキービジュアルを担当させていただきました。ぜひ劇場でご覧ください!
https://twitter.com/you629/status/1634161069139857416?s=20
技法書や画集も出版してるのでもしよかったら買ってね!
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